一条流がんこラーメン

天気が悪い~、気温が低い~♪
そんな予報の天気の日こそ、行列店に行くチャンスー!

そうそう!フツーに考えるなら、冷たい雨に降られながらの行列なんて避けたいモードになりますよね。だからこそ(多分)狙い目、気になるあのお店、このお店、さぁて何処に行こうかなー!

と、言うことで、やって来たのは四ッ谷三丁目。
一条流がんこラーメンです。

こちらのお店、ブログにて営業有り無し、メニュー情報が配信されているのですが、本日から、本来日曜祝日のみのスペシャルを、土曜日にも「上品」という醤油ラーメンベースで提供をスタートするとの告知。
恐らく競争率が高いであろうこのスペシャルを狙うには、認知度の低い初回の今日が千載一遇のチャンスです。

杉大門通りに入り込み、探すこと暫し、それらしき奥まったビル内の並びにたどり着きます。

さて、辿り着きましたる11時20分、自転車は何処へ停めようかとキョロキョロしていると、早くも食事を終えたお客さんらしき人に親切に声を掛けられます。

「自転車ならここ出ますからどうぞ~」
「初めてですか?」
「最後尾はあそこ、右手の奥になりますよ」
「今日の家元(店主のことを、ここではこう呼ぶようです)のブログ見ました?今日のスペシャルは天然真鯛や貝類がベースの95点の高得点、ここにはジンクスが有って、空いている時程、高得点が出るんですよ~」

いやいや有難いですね、分かりにくい立地に慣れぬ行列参戦、しかも並んでいる人は100%男の人。

けれど20席くらい椅子が並べられヒーターも数台完備、屋根下という行列するには何とも嬉しい設備環境。いたみいります。

目ェ光っている牛の骸骨!

鼻、骨折してて痛そう!

看板?のこれまた骨!

けれど流石はラーメン、並びの進みは早く、12時10分入店です。店内は狭くカウンター7席のみ。

先程の親切なお客さんに教わったとおり、家元…が遠かったので、奥様らしき方に声がけをします。

「初めてなんですが…」

すると奥様、元気そうな老齢の家元を呼んで下さいます。

「じゃあね、これとこれ、色と匂いでどっちが美味しそう?」

と、差し出された小鍋。かたや黒いスープを背脂が覆ったもの、かたや鍋スープのような薄い褐色のもの。

断然、黒いほうが好みでした。ちょっと煮詰まった感が有りながら奥から返す甘味を含んだ凝縮した香り。褐色のほうは反対に薄い水っぽさを感じました。

渡されるカード。

なんか認めて頂いたようなので拝受させて頂きます。

すると、注文を聞かれる事無く進められて行く調理、待って待って、私、スペシャルが良かったんですけど気が付けば定番の「100の純正」になっているようです。
先程の小鍋は本日の2アイテム、「上品スペシャル」と「100の純正(だしのみ)」のスープだったわけなのですね。そして私が選んだのが100の純正だったのですが…。

「100も美味しいわよ、定番だから」

と言う奥様、もうここでごねても後戻りは出来なそうです。新参者が家元がたを困らせる訳には行きません。

着丼!

100の純正(900円)+400g特盛(300円)です。
成程、盥のようにデカイ丼、豪快です。

スミマセン!400gの麺が伸びるので、麺リフト撮影は飛ばします!

ズズッと啜ればプリプリの中細麺は滑らかに舌を滑り、摩擦力とウェーブの弱さ所以、スープの持ち上げは軽いながら濃厚出汁の味と香りの強さを纏って穀物の甘味がしっかりと感じられます。

そしてこの、醤油が入らないとは思えない真っ黒なスープ。見た目の背脂が嘘のようにしつこさが無く、旨味の海原に放り込まれたような旨味と旨味が縦横無尽に怒涛の如く押し寄せるカオス。
何がどうとか分析解析を撥ね付ける、とことんエキスを絞り尽くしたかのようなカラメルめいた凝縮し切った甘味の後口。
聞けば色々な出汁を強火で6時間以上煮込んで煮詰めたスープだとか。

トッピングは割と定番。海苔、メンマ、葱、チャーシュー、煮卵、に、何やら奥の寸胴で煮染められていたバラ肉、通称悪魔肉。

食欲をそそる磯の香りにまずはと海苔を箸に掬い、まだまだたっぷりの麺を挟み取れば、ああ海苔に米とはまた異なる潤潤しい舌触りにやわやわと蕩ける海苔の風味が口腔から鼻腔に抜けて、一枚一口で食べ切ってしまった悔恨が瞬時胸を過ります。
それを上書きすべくと箸を伸ばす瑞々しい輪切り葱は少々荒切りながらこれくらいの食べ応えでないとスープに呑まれてしまうところ。ただ、私の場合は特盛りなので、もう少し辛味が残っていたら尚良かった。
メンマは普通。と言うか遠い記憶のメンマそのもの。
悪魔肉はいわゆる生姜焼き、しかもお弁当に入れるような味付けしっかり火入れしっかりのバラ肉。正直、この火を通し過ぎて細胞が凝固し干からびる寸前の食感、肉の旨味を抜いて調味料の味を含ませるという仕様はあまり好きな仕上がりではないですね。ファンの方々には申し訳ないのですが、悪魔肉と言う程のインパクトは感じず。昔っぽい肉惣菜。

の、筈なのに、単体で食べると今一つなのに、スープと麺と噛み締めると何故かやめられない止められない。脳の理解ではなく条件反射的な欲求がノンストップ!

更に!

このチャーシューが!
このチャーシュー様が!

神!

まじ一口食べて目がひん剥けたの勢いです。箸で持ち上げられない程柔らかいのに舌に吸い付く程しっとり滑らか。
塩加減がびたりと決まり甘ささえ感じる程。これ、スープや悪魔肉と同じ店のレシピとは思えない、もの凄く上品なチャーシューです、ヤバい!ここチャーシュー麺やプラストッピングが無いのが口惜しい!

更にこの煮卵が!
煮卵様が!

ぷるるん…。

箸で持つだけで分かる白身からしてゼリーライクな煮卵、これは飲み物!
噛めば細やかな抵抗を歯に与えつつぷっつり卵膜のある境界を噛み込んだ瞬間、溢れる黄身の甘さはプリンなんて目じゃありません。

スープは確かに喉にひりつく程に塩がきついのですがこの塩辛さも味の一部。濃厚な出汁とのバランス的にはこの輪郭が必要とも言えます。
卓上調味料は胡椒と七味唐辛子。七味はイマイチでしたが胡椒は凄く良く合います。
更にカウンター上部には何やら醤油のようなソースのような黒い液体も有りましたが、聞いてみたところ塩気が足りなかった時にどうぞと言うことで今回は使用せず。

意外な事に食べれば食べる程に内蔵が活発化。
こちらはメニューに無い為にライス持参OKなので来る途中で新宿高島屋地下一階で購入した魚沼産コシヒカリの玄米おにぎりをイン!

1個では全く足りませんでしたね。スープがこんなにサービス量だったとはリサーチ不足。あと2個は買って来るべきでした。

玄米、栄養価的にスペック高いだけでなく、自体の味の強さがスープと相乗効果を生み出しており、皮の芳ばしさ、スープを吸ったプリプリ感がパスタチックでなかなか良いです。

素直に美味しく感じるのはやっぱり人と羊のような澄み切ったスープなのですけれど、こちらのスープは確かに中毒性が有りますね。
「明日のスープはどんな味だろう」
「次のスペシャルは何だろう」
気が付けば意識を奪われている自分がいます。

家元の気さくな人柄も魅力の一つ。そして集まるお客さん達同士も互いに挨拶しあっていたり、新参の私にも、家元との語らいに何となく反応してくれたり。

「あの店に行けばみんなが待ってる」

そんな暖かな気持ちになれる、ラーメンのド個性以上にあたたかな雰囲気が印象に残るお店でした。

ごちそうさまでした。